小さな泥棒

時かけは映画欲を刺激する。

20年前に見て以来ずっと気になっていた映画がDVD化されているのに気がついて近所のTSUTAYAで借りてきた。シャルロット・ゲンズブール主演の「小さな泥棒」である。今ではすっかりベテラン役者になったが、この頃のシャルロットはデビュー当時の広末涼子をうんと不安定にしたような感じ。要するにそのアイドル映画である。

紺野真琴は馬鹿っぽい可愛らしさだったが、シャルロット演じる主人公は筋金入りの馬鹿で考えなしに盗みを繰り返す。恋仲になった40男が手に職をつけさせようとするのだが、若い馬鹿男にたぶらかされてとうとう感化院にぶちこまれる。院内で仲良くなった仲間の手引きで脱走するが、妊娠が発覚。堕胎を画策するある日、インドネシア戦線に向かう戦士のニュースに馬鹿男の姿を発見して吹っ切れる。

第二次世界大戦後の混乱期を描いているとはいってもかなり無茶なストーリーである。主人公の痛々しさはかなりのものだが、ぼよよんとしたシャルロットのおかげでそれほど殺伐とした感じもなく、後味はそんなに悪くない。

ナタリー・カルドーヌ演じる感化院の仲間がシャルロットと対照的にいきいきしてとてもよいアクセントになっている。感化院のシーンは綿密な取材にもとづくらしく見ごたえあり。実はこの映画で一番記憶に残っていたのは感化院の少女達が歌う(歌わされる)歌で、これだけでも再見の価値があった。

主人公の最後のせりふは「出発だ!」で、青春映画のラストはやはりこうでなくては。