「未来で待ってる」

この千昭の最後のセリフは本編の終わったあとのいわば余興のようなものだが、それでも映画全体のメッセージを左右するきわめて重要な位置に置かれている。

「未来で待ってる」に言外の真意があったりするだろうか。千昭という人物を考えるとあんまりそういう感じはしない。それはやっぱり「未来で待ってる」でしかないだろう。

初見のときは(真琴と一緒に)呆然としていたので、千昭がいきなり戻ってきたときには「何だ何だ」としか思わなくて、しかも「未来で待ってる」というわけのわからないセリフに混乱しつつも、真琴らしい返事に「なんか映画っぽいなあ」と感心したのだった。

何度も観ているうちにこのシーンのメッセージがしみこんできた気がする。それは真琴の存在に対する無条件の肯定だ。時かけが恋愛映画であったならばドラマチックなセリフで盛り上がったところかもしれない。が、時かけはど真ん中ストレートの青春映画であり、大切な親友の喪失と引き換えに未来への希望を手に入れる、という成長のプロセスをきっちりと描ききっているのである。

そう思ってみていくと、エピローグでの真琴のすっきりした(中途半端少女らしからぬ)言動が自然ななりゆきに感じられてくるのである。