ジョゼと虎と魚たち

時かけと比べうる甘酸っぱい青春映画って何があるかなあ、と考えて思い出したのは「ジョゼと虎と魚たち」(ジョゼ虎)。田辺聖子原作で、妻夫木聡演じる頭空っぽの大学生と池脇千鶴演じる足の立たない少女の恋愛を描いた作品である。

大学生のほうはともかく少女のほうは本当にいそうかと言われると首を傾げたくなるのだが、恋愛のはじめから終わりまでをきっちりリアルに描写しているので実話のような気がしてくる。少女が身体障害者であるのは人物を描き出すひとつのしかけにすぎなくて、とにかく恋愛で、とにかく青春なのである。

時かけと決定的に違うのはセックスが介在することなのだけれど、抑圧的などろどろしたものとは違って一種の乾いた明るさすら感じる。ひょっとすると時かけにおける野球とたいして変わらないのかもしれない(いやまあ、さすがにそんなことはないか)。

ジョゼ虎の最後は大学生と別れた少女が、電動車椅子で闊歩している姿で終わる。そのりりしくもたくましい姿は、「あたしもさ、実はこれからやること決まったんだ」と言いつつ功介を煙に巻く真琴に重なる。

とするとやはり、タイムリープは真琴という人物を描くための舞台装置にすぎず、時かけは直球の青春映画である、という結論にたどりつくわけなのだった。